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2018年、現役引退…
ミスター浦安の、20年間に及ぶフットサル人生とは。
フットサルプレイヤー岩本 昌樹
text / Rika Okubo
Episode1
出会いはひょんなことだった。幼稚園時代からサッカーをプレイし続けてきた岩本は、友人に誘われ、大学卒業時にフットサルをスタートする。11人制で行うサッカーとは違い、5人で行うフットサルは岩本にとって魅力的だった。攻撃にせよ、守備にせよ、たくさんプレイに関わることができる。
1998年に仲間らと立ち上げたPREDATOR(バルドラール浦安の前身のチーム)で大会に出場するようになると、岩本はすぐに頭角を現し始め、関東リーグ・全日本選手権制覇。徐々に日本代表候補合宿などから声がかかるようになる。この頃から、フットサル一本に専念することを決断した。
Episode2
更なる大きな決断は、2002年のことだった。スペイン2部リーグALBACETE.F.Sに移籍を決める。当時、日本にはフットサルの全国リーグは存在せず、プロとしてプレイしたいと考えた末の決断だった。とはいえ、日本人で海外を拠点とする選手は誰1人として存在しない時代。
発起してから半年後、ようやくプロテストを受けるチャンスを掴む。手探りの中、見事合格。日本人初となるフットサルプロ契約選手としてスペインリーグに渡った。日本人として初めて切り開いた、という感覚は今も驕りのように感じる。あくまで周囲の人たちが、自分のやりたいと思ったことに手を差し伸べてくれたが故の結果であり、人に恵まれたのだと岩本は言う。
2007年には日本フットサルリーグ(Fリーグ)が開幕。古巣であるバルドラール浦安に所属し、チームの礎を築く。2006年、2008年JFA全日本フットサル選手権大会優勝、2007年、2008年リーグ戦準優勝と、華々しい功績に貢献した。2008年の全日本優勝は、特に思い出深い試合だという。代々木第一体育館で行われたこの決勝戦は、7000人もの観客が見守る中、バルドラール浦安がリーグ戦首位を走る名古屋オーシャンズを下す結果となった。
Episode3
昨年2018年、現役生活20年をもって岩本は引退を決断した。正直、身体やモチベーションの衰えを感じていたわけではない。ベテランが重宝されがちなフットサルの世界において、後進育成の必要性を考えた結果だった。今後はフットサルの普及と強化に尽力していきたいと考えている。
20年間の現役生活を振り返って、特に大切にしていたことは「準備」に尽きると岩本は言う。週末の試合に向けて一週間準備する、シーズン最後の結果に向けて一年を通して準備する、試合で達成できることは全て準備によって決まると言っても過言ではない。
練習で極限まで身体を追い込むから、試合で息を切らすことがない状態にもっていける。そう思っていたからこそ、調子がよくても悪くても、迷っても気持ちが乗らなくても、試合に負けても、毎日変わらず同じ準備をすることを心がけていた。だからこそ、20年という長い現役生活の中、怪我という怪我に泣かされることがなかったと胸を張れる。初めからそう思っていたわけではない。継続し続けた今振り返るからこそ間違っていなかったと思うのだ。
Episode4
フットサル業界全体のボトムアップのために今後やっていくべきことを問うと、岩本が一番に上げたのはサッカーとの関係性の強化だ。フットサルのボトムアップにはやはりサッカーが不可欠であり、それは何より自身の経験からくる言葉でもある。幼稚園から、長らくサッカーを続けてきた岩本にとって、フットサルを始めた時思いがけず見えたことがあった。
フットサルでボールに触れる時間が長くなることで、格段にシンキングスピードが上がる。育成時代にサッカーとフットサルを兼ねる事でサッカーの質が向上するのではないかと考えたのだ。現に、サッカー先進国のブラジルやスペインでは、それらを両立してやっている選手も多い。棲み分けではなく、共存させること。そのために、現在も続けている子供達へのスクールは必要不可欠と考えている。
20年間、自分自身というよりも、応援してくれる人に応えたいというモチベーションでフットサルを続けてきた。自分の成功が目的であれば、ここまで長くは続けなかっただろう。引退した今もその気持ちは変わらない。これからは、育成という形で還元すべく、学びを続けなければと思っている。
Profile
岩本 昌樹 Masaki Iwamoto1976年1月生まれ/千葉県 1998年に明海大学サッカー部OBらと共に結成した、PREDATOR(バルドラール浦安の前身のチーム)でフットサルを始める。2002年、類い稀なテクニックとスピードで、1対1での絶対的な強さを武器に渡欧。日本人初となるプロ契約選手としてスペインリーグでプレーする。2007年に開幕したFリーグでは、バルドラール浦安に所属。以後、“ミスター浦安”として2018年の引退まで、ピッチ内外で欠かすことの出来ない存在として活躍。